道しるべ・トップ/あらすじ |
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■ 都会での準備篇 |
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Chapter0. としのはじめの家族会議 |
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Chapter1. プロローグ |
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Chapter2. 2008年のできごと |
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Chapter3. 2009年のできごと |
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Appendix1.笹村あいらんど視察 |
Appendix2.たんぽぽ堂視察の記 |
Appendix3.すれ違いは埋まるのか |
Appendix4.田舎の土地の探し方 |
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■ 移住開始篇 |
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Chapter4. 2010年のできごと |
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2009年の元旦、北鎌倉で独り住まいをしている息子がひょっこり顔をだしました。月になんどか、こうして腹を満たしに訪ねてきます。ひさびさに一家五人がそろい、家族会議を開くことにしました。これで3回目になります。
翌春には横浜の団地を引きはらい、わたしたち夫婦は秋田に移住します。そういうことは、最初から伝えていました。27歳の娘を筆頭に、2歳ずつ違いで息子と娘、もうみな社会人でもあり、すでにわきまえています。
ふつうであれば、子が親元を巣立って離れていきます、それが逆になるだけのことです。わたしたちがどこに居ようと、親は親であり、子が子であることに変わりはありません。残る月日をときには慈しむようにして家族での都市生活を謳歌すれば良いのだと思っています。ただ、ひとつの屋根の下に住んでいればこそ、親、というよりも、ひとつ先を生きた世代としての背中を、間近でキチンと見せておきたいものです。そういうわけで、おりに触れて家族を集め、そのときどきの状況を吐露することを心してきました。
一年前に準備を開始したころは、田舎で暮らす、というイメージだけで漠然としていました。ここにきて、ようやくその構想が見えてきました。
資料は、以下の2点。
■Final Quarter Policy & Scenario in Our Lives 〜里山生活を軸として〜(PDFファイル)
■Final Quarter Plan in Our Lives 〜小規模パーマカルチャの実験・実証的実践〜(PDFファイル)
この一年間の活動や成果をとりまとめたものです。年明けのどこかで家族が揃うことがあれば、会議を開こうと思い、事前に用意をしていました。それが元旦早々になるとは幸先良し、でしょうか。
いずれ田舎に移り住みたいという想いは、40代なかばのころからぼんやりありました。“将来はどうするかな、どうせなら自然の豊かなところに棲みたいね、北海道、青森、岩手、秋田、長野・・・温暖な裏伊豆もいいね”と、そういうレベルのものでした。ただ、そのささいな想いが、わたしたちの心の奥底にすこしずつ沈殿して、今回の一連の活動のモチベーションにつながっています。潜伏期間のようなもので、実はなくてはならないプロローグなのだろうと思います。
移住に向けて動き始めたのは、2008年2月ころになります。この年は3回、秋田を訪れ、現地の役場やNPO、Uターン等の先達の話しをうかがい、じっくりと構想を練ることにしました。百聞は一見にしかず、いろいろな出逢いがあって、いろいろな気づきがありました。しかしながら、どういうときにでも自問自答がついて廻りました。
“ここに住むとして、いったいなにをやりたいの、やれるの”
“身しらずの土地で居を構えて、やっていく覚悟がほんとうにあるの”
“やりたいことばかりを拡げていっても、そういう資金もないんでしょ”
“こんな里山の片隅でリストランテをやるっていうけど、お客さんが来ると思ってるの”
“けっきょく、君は本当のところなにをやりたいの、それがわかってないんじゃないの”
活動を始めてみて、まず待っていたのは、「戸惑い」や「揺らぎ」でした。
しかし、自問自答は、わたしたちの半生を立ち止まって振り返る機会になりました。同時にそれは、次の歩き方について自分たちの内面と会話してみることでした。
いろいろな方のアドバイスや意見に耳を傾けました。本も読みました。ウェブの情報も漁りました。そして、また自問自答を繰り返しました。
やがて心が透き通ってきました。そうすると、どうしても複雑にからみ合ってほどけなかった(知恵の)輪が、すっと分解されるのでした。不安は消えませんが、迷いはなくなりました。
活動を始める前と後とで、わたしたちのピュアなところは実は微動だにしていないことに気づきました。戸惑い、揺れて、右へ左へと気持ちは彷徨いましたが、一歩も後ずさりはしなかったことにも気づきました。そのとき、たとえどのような結末が待っていたとしても、やってみようと決意しました。
家族会議を終えた夜、計画書をめくりながら、ポツンと妻がつぶやきました。
“一年かかったけれどずいぶん見えてきたよね”
そのひとことがこの期間を語り尽くしている気がします。